2007年 日本映画
三木聡監督
ずっと観たかった「転々」を川崎で観て来た。
11月の午後に観るにはぴったりな作品だった。
前作「図鑑に載ってない虫」では過剰で下品な小ネタのオンパレードだったが、今作はゆったりとしたテンポで割と丁寧に作品は進む。
なにしろストーリーの大部分はオダギリジョーと三浦友和が東京を散歩するというただそれだけの事だからだ。
オダギリジョーと三浦友和のコンビの演技のよさがこの作品の大部分を占めているといってよい。
ゆったりとした世界に三木聡独特の小ネタが入り込む。時に浮いているネタもあり消化不良な部分もあったが、作品全体は家族愛をそれとなく織り交ぜて切ない佳作となっていた。
三木聡作品にはかかせないふせえりと若松了、そして松重豊がスーパーの従業員役で登場。この3人がでてくるだけでもうニヤリとしてしまう。とくに若松了の演技は一言しゃべるだけでもう面白すぎて笑ってしまう。
「ちょっときいてよ~、さっきレジの女の子に『つむじがくさい』っていわれちゃってさ~。まいったよね~」
これが今作の若松了の最初のセリフだ。期待通りの面白さでニヤリとしてしまった。
前半物語が感傷的になるのを、この3人のコミカルな演技が防いでいて効果的であった。
全体的には三浦友和の散歩にでるまでの事情や過去の描写がいまいち浅く、観終わった後にあと一歩カタルシスがほしいところであったが、こういう作品も作れるとはやはり三木聡はタダモノではない。
冷静に考えれば三木作品はどれも「笑えて切ない」映画だった。そういった意味では本作も変わらないのだ。
今後の作品にも期待大である。
(生涯607本目の作品)
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