スティーヴン・ダルドリー監督
2008年アメリカ/ドイツ映画
いい作品だった。
ケイト・ウィンスレットのリアルな演技が力強くていい。
それと対照的なデヴィット・クロスの未熟さを残した青い演技もよく映る。
前半はこの女性と青年の激しい恋の様子が描かれる。
ある日女性は突然青年の前から姿を消す。
中盤以降はこの2人がとある出来事をきっかけに再会するのであるが
2人の間に直接のコミュニケーションが生まれないため
エモーショナルな展開はなく、盛り上がりにはやや欠ける気がした。
だが、逆にそれがいいのかもしれない。
この映画はおおげさな演出がないのがいいのだ。
中盤に重要なテーマとして描かれるのはアウシュビッツなどナチスによるホロコーストの悲劇である。
それに対してもあまり感情的にならずに、冷静な神のような視点で人間のしてきた業を淡々と映しだしている。
戦争についてそれに加害者として関わった人間一人一人を見ていった場合、
その人が「正義か悪か」という単純な理論では決して割り切れないという現実、
言い換えれば人間がかかえる根本的な矛盾というものを、観るものに提示しているかのようだ。
終盤、年月を経て年をとった2人の間に再び愛のコミュニケーションが始まる。
それは実に静かであたたかいやり方である。
この辺も派手さはないがそれでいいのだと思う。
ラストも淡々と静かに終わっていく。
なかなか味のあるラストである。
というわけで派手さにはかけるが
なかなか深いいい映画である。
こういう作品は2回観るとまたグっとよさが増すと思う。
以上(生涯694本目の作品)
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