2007年8月1日水曜日

森見登美彦「【新釈】走れメロス 他四篇」


日本文学の名作5篇を森見登美彦が舞台を現代の京都にアレンジして独特の視点で描いたちょっと変わったリメイク集。
収録されているのは
「山月記」中島敦
「藪の中」芥川龍之介
「走れメロス」太宰治
「桜の森の満開の下」坂口安吾
「百物語」森鴎外
以上5篇のリメイク版である。

森見作品だからといっていつもの一筋縄でいかない面白さと痛快さを期待すると肩透かしを食らうであろう。
全体的にトーンが暗く、人間の深層心理に潜む恐怖や悲しみを描いた作品が多いのだ。
そういった重さを全部吹き飛ばす唯一の痛快な作品がタイトルにもなっている「走れメロス」である。この「走れメロス」は全編森見節全開でありスピード感もあって実に面白い。こんな風に書いて太宰治のファンに怒られやしないかちょっと心配だ。

個人的に一番面白かったのは「桜の森の満開の下」であり実に怖い作品だった。
坂口安吾の原作を是非読んでみたいと思う。

森見自身によるあとがきに「この作品をきっかけに原典を手にとる人がふえることを願う」とあるが文学にめっぽう疎い私にとってはまさに良いきっかけとなる本であった。

全編通して難しい漢字が少なく文字も少ないので大変読みやすい。私はほぼ1日で読み終えた。
しかし原作が名作なので内容は深いのだ。
そして「走れメロス」についてはこれはもうリメイクというより森見の面白さとバカらしさが40ページほどにギュウっと凝縮された正真正銘の「森見作品」になっていると思う。

というわけで森見登美彦に興味のある人、原作に興味のある人、サラっと短時間で本を読みたい人などなど
多くの人にオススメできる作品である。

SUN SET LIVEまであと30日!!

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