2007年7月30日月曜日

「天然コケッコー」鑑賞。


山下敦弘監督
2007年日本映画

月曜だが会社を私用で休み、シネスイッチ銀座にて「天然コケッコー」を観てきた。
期待以上に良い作品であり、とても良く気分転換ができた。
最初にいっておくけどオススメです!!

ど田舎の木村町にすむ右田そよは中学2年生。学校は小中合同の校舎で全校生徒は6人。毎日全員で登校するなど家族のように平和に暮らしていた。そこに東京から転校生の大沢広海がやってくる。「イケメン」同級生の登場にそよは初恋の予感を感じるが父はなぜか大沢との交際を猛反対する。

てっきり「恋愛」がメインの物語かと思いきや、決してそうではなかった。
そよとその家族や学校の仲間達の田舎でのこころあたたまるスローな生活がメインである。
山々の風景や海、学校の教室、机や椅子、給食、夏の祭りなど観ているだけでもここちよい。
その中の1つに大沢との「恋愛」があるにすぎず、それも「恋愛」と呼べるようなものではなく中学生らしい甘酸っぱいものであり、どこか間抜けで笑いを誘う。大沢の役柄がもっと生意気で大人っぽい男であったなら話は変わってきたと思うが、東京から来たという設定以外はごく普通の中学2年生の男子であり精神年齢はあきらかに田舎者のそよの方が上のように感じた。なので田舎の生活にも普通になじんで物語の中でもさほどの事件は起こさずにおとなしくしていたと思う。

主演の夏帆は力の抜けた見事な演技でこの作品のここちよい雰囲気を決定付けていたと思う。
父を演じた佐藤浩一や夏川結衣も重過ぎず軽すぎずでいい仕事をしていた。
そして学校の生徒達が(特に小学生)これはもう演技ではないのかもしれんが、ほんとに可愛かった。

終始淡々と物語は進むがそれでも中学2年から3年になりそして卒業して高校へという2年間におけるそよの成長を丁寧に描いていて好感がもてる。中学3年時に東京へ修学旅行へ行くが、あまりの人ごみに圧倒され逆に田舎の良さを痛感する場面も感慨深い。
「リンダリンダリンダ」もそうだったが山下監督は力の抜けたスローなテンポの演出が見事でこの作品にはまさにうってつけの監督だったと思う。が、ただただゆるい映画かと思えば決してそうではなく、給食放送のシーンや校内清掃のシーンなどなんてことない場面に誰もが共感するノスタルジックな愛らしさを上手く織り込んでおり見事である。東京に来た場面では田舎では映らなかった雨に塗れて黒々と光るアスファルトをアップで映したりしていて、さりげないけど実に上手いのだ。

というわけで山下敦弘監督の演出のさりげない上手さと島根の田舎の情景が実によくマッチした大変良い作品であった。
時と場所、一緒に観る人などを選ばずに誰にでもオススメできる愛らしい作品だ。
興味を持った方はぜひとも今のうちに劇場で観ていただきたい限りである。
(生涯595本目の作品)

SUN SET LIVEまであと32日!

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