2007年7月29日日曜日

「太陽はひとりぼっち」鑑賞。


ミケランジェロ・アントニオーニ監督
1962年 イタリア、フランス映画

ミケランジェロ・アントニオーニ監督の作品は常に「不安」な雰囲気が漂う。
その「不安」は結局のところ現代において人が他者と解りあえない事が原因である。
セリフも極端に少ないが、それはどの登場人物も言葉での他者とのコミュニケーションにはすでに限界があることに気づいているかのようである。
このなんともいえない独特の不安感にハマった人にとってはアントニオーニは「名監督」となるが、
これを受付ない人にとっては「全くもって退屈な映画をとる監督」となってしまう。

この「太陽はひとりぼっち」もそんな「不安」が終始漂っていた。
「情事」「夜」と並んで「愛の不毛3部作」と呼ばれているらしい。
「愛の不毛」とはよく言ったものでまさにそのとおりの作品であった。

物語としては実にシンプルであり主人公ヴィットリアがフィアンセとなんとなく別れて、別の男ピエロとつきあい始めるがそこにも愛は見当たらないというただそれだけの話であり、ストーリー性を楽しもうとすると完全に肩透かしを食らうだろう。

一番の見所は終始不毛の愛にけだるいやるせなさを漂わすモニカ・ヴィッティの美しさであろう。そしてそんな彼女に若者らしい愛を勢いよくぶつけるアラン・ドロン扮するピエロもまた美しい。しかしどんなにピエロが愛をぶつけてもヴィットリアの表情から倦怠感が消えることはない。この2人の対比が見事である。

そしてあまりに唐突なラストに「終わりかよ!」と思わず声をあげてしまった。
よく考えるとアントニオーニの作品のラストはどれも答えがいっさいでないのが特徴である。これはもう意識的にそうしているとしか思えない。不安なまま始まって、不安なまま作品は進み、ラストも不安なまま終わってしまう。人間の持つ根底に漂う他者への不安をここまで徹底した無情さで描いているのは彼以外に考えられない。

物語と全く関係のない風景や場面が多いのも特徴である。
特に乾いた都会の風景の数々はどれも圧迫感や不穏な雰囲気にあふれ、観るものの不安倍増である。

というわけでこの「不安感」がたまらないアントニオーニ作品。他の作品もDVD化を望みたい限りである。
(生涯594本目の作品)

SUN SET LIVEまであと33日!

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