2007年7月8日日曜日

「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」鑑賞。


吉田大八監督
2007年 日本映画

今日は渋谷に買い物でもしようとブラっと行ってきた。

15時前に渋谷のパルコの地下の本屋リブロで、気になっていた映画「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」の原作者が、ずっと気になっていた作家本谷有希子だったということを知り、驚くと同時に妙に納得。
さらにパルコのすぐ裏にあるシネマライズで「腑抜けども~」が昨日から公開されているということなので、突発的に15時からの回を観てきた。

感想は、おもしろかったけどラストが甘いなと思った。

女優志望で東京に上京していた澄伽は、両親の事故死によって田舎の実家に帰郷する。
澄伽の秘密を漫画にして暴露したという過去を持ち、それ以来姉に激しくいびり続けられている妹と、血がつながっていないゆえに澄伽と他人にはいえない秘密を持ってしまい、その過去により人生が深い絶望につつまれている兄、何も知らない兄の嫁、彼ら3人が住む実家の日常は、澄伽の帰郷により戦慄の走る毎日へと変わってしまう。

この作品は、終始田舎を舞台に展開する一家族の壮絶な、そしてちょっとコミカルなドロ沼劇である。
登場人物たちの心にどんよりとのしかかる絶望感と、それを増幅させるようかのような山に囲まれた田舎の閉塞感の漂う風景が良い。

役者達の演技が素晴らしい。
特に永瀬正敏は、この作品中で群を抜いた演技力で、もう背中だけで演技しているといっても良い。絶望から抜け出せず身動きがとれない兄役を見事に演じており素晴らしいとしかいいようがないが、どちらかというとこの作品にはもう少し軽い演技でも良かったのではないかとも思う。残りの家族3人に比べてあまりに演技が重すぎるように感じた。

主演の佐藤江梨子も持っている力全てを使ってよくやっていたように思う。
妹を演じた佐津川愛美も言葉少なげに漫画に没頭するアングラな役によくハマっていた。
唯一の明るい天然キャラである兄嫁をコミカルに演じた永作博美も見事。

監督はCM界のベテランで、長編映画はこれがデビュー作とのことであるが、これ見よがし的な派手な映像は終盤のクライマックス以外はほとんどなく、落ち着いた映像で役者の演技をじっくりと映していて好感が持てる。

がしかしラストがどうも尻切れトンボな気がして、「え、これで終わりですか・・?」と思わずにはいられなかった。それまで張り詰めていた緊張感と絶望感、特に妹と姉の関係がどうにもこうにも無責任に放棄された感じがして「結局あの2人はどうなるんだよ?」といいたくなってしまう。あのラストシーンは「中途半端」としかいいようがない。
この辺は脚本も手がけた吉田監督の腕の甘さといえる。

どうやら原作と映画ではラストが違うらしい。映画館を出てから早速原作も購入したので、その違いをこの目で確認したいと思う。

とはいえ家族4人を演じた役者の演技だけでも見ごたえ十分の作品だ。
とくに永瀬正敏ファンの方は一見の価値ありだと思う。
(生涯591本目の作品)

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