2007年7月28日土曜日

「インランド・エンパイア」鑑賞。


デイヴィット・リンチ監督
2006年アメリカ映画

恵比寿ガーデンシネマにて先週観ることができなかった「インランド・エンパイア」をついに今日観てきた。
良くも悪くも期待通りのリンチ作品であった。
観終った直後は「超ワケわかんねー」というのが率直な感想だった。けどつまらんわけではなかった。
ある有名な映画のセリフを引用してこの作品の鑑賞方法を言うのなら
「考えるな!感じろ!」
そんな作品だと思う。

ニッキーはハリウッド映画「暗い明日の空の上で」の主演女優に抜擢される。その映画は昔ポーランドで途中まで製作された映画「47」のリメイクで、「47」は主演の二人が殺されたために製作中断となったいわくつきの作品であった。ニッキーは「暗い明日~」の主役スーザンを演じていくうちに映画の脚本と同様に主演男優デイブと不倫の関係になっていく。ここまでは物語も分かりやすく普通に観ることができる。

がしかし、ニッキーがある日撮影スタジオから奇妙な「部屋」に迷いこむ場面以降は物語の時間軸や空間軸は爆発して機能しなくなり、時空間を一切無視した断片的な悪夢的映像のオンパレードとなる。ここからは理屈が通用しないので観客は感性で感じるしか手はなくなってしまう。ニッキーがいきなり時空を超えてポーランドへワープして「47」のただならぬ世界を体験したり、「部屋」で踊る娼婦達が現れたりとそれぞれの映像、キャラクターがどうつながっているかは理屈では説明しようがないので感覚に観るしかない。映画の中に「暗い明日の~」と「47」という2つの映画内映画が存在しそれぞれと現実との区別が非常に分かりにくい、というか全く分からないのでもう大変だ。ニッキーの実の金持ち夫が映画内映画でも冴えない夫役をやっていたりして「へ、旦那も俳優だったの?」とか考えだすともうどうにもこうにもならないので余計な事は考えないほうが良い。

それでもなんとなく分かるのは、この映画は「47」の主演女優で撮影途中に死亡した女優の亡霊が、ニッキーの時空を超えた冒険により最終的に報われて成仏する、そんな物語なのではないかということである。
これも私個人の勝手な推測にすぎないが。

この映画の映像はフィルムではなく全編ソニーのデジカメで撮影されいる。そのために映像は粗くぼんやりとした不安をあおる感覚がありこの作品にはマッチしていたと思う。

というわけで「インランド・エンパイア」は理屈ではまったくわけ分からん怒涛のリンチワールド炸裂の悪夢的作品であった。
しかし分からない分だけ観終った後も頭から離れないんだよな~。DVD化されたら絶対買って観なおすと思うし、この「分からなさ」ってもしかしてリンチの策略では?なんて事を思った1日であった。
(生涯593本目の作品)

SUN SET LIVEまであと34日!

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