2008年2月20日水曜日

村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」


一昨日読み終えた。

いやー面白かった。

近未来の日本で主人公の男が、自分の脳内に秘められたある情報をめぐって、映画のような冒険を繰り広げる「ハードボイルド・ワンダーランド」、
そして高い壁に囲まれて、どこか物悲しい雰囲気が終始漂う幻想的な「世界の終り」、
この2つの全く別の世界が交互に描かれる。
読み進んでいく内に2つの世界のつながりが解っていくのだが、そういう物語展開もさることながら、
魅力的な登場人物や、ディティールや、テンポの良い文章自体がとにかく面白い。

そして終盤に行くにつれて、この本の主人公に深く共感している自分に気づいた。

この本を面白いと思う人は、この本の主人公同様、心に高い壁を作って自らを「完全な世界」におき、その世界に浸ることに生きるやすらぎを見出している人間だと思う。
間違いなく私もそんな人間なのだ。

「あなたは頑なにすぎるんじゃないかしら?」

物語終盤で主人公にこう語りかける女性のセリフに、自分の事を言われている気がしてどきっとしてしまった。

ラストで主人公は、自ら作り出した「完全な世界」か、他者とかかわらざるをえない「現実社会」か、この2つのどちらで生きていくのか選択をせまられる。最後に主人公のとった答えはそのどちらでもなく、そう単純なものではなかった。最初はこの結末に混乱したが、よくよく考えてみてなんとなく納得。
深く共感できただけに色々考えさせられた作品だった。

しかし村上春樹の描く世界って日本を舞台にしてもまるで日本にかんじないな。
「日本臭さ」が希薄なんだよなあと思った。
以上。

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