2008年6月16日月曜日

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル」


大体1ヶ月で3部全てを読み終えた。
「羊をめぐる冒険」にも共通した恐ろしさを持った作品である。
正直読んでいる間かなりしんどかった。
この作品を読んでて思うのは映画でいうと非常にデヴィット・リンチ的な闇の世界が描かれているという事。ラストの部分なんて「インランドエンパイア」にそっくりだなと思った。

実際はリンチよりもっと深く恐ろしい物語である。
人間の深層心理に潜む闇。それは人間の持つ「暴力」的な側面であり、それは歴史上においては「戦争」へ必然的につながっていく。そういった闇の世界へある日、妻の失踪をきっかけに突然どっぷりとつかっていくことになる主人公。とまどいながらもこれまでの平和な日常生活のなにもかもを、なすすべもなくひたすら失い続けていくその様はなんともしんどかった。

一読しただけでは説明のつかない意味不明な場面や、意味不明な登場人物の行動も多い。そしてそういった意味不明な場面の全てが強烈な闇のインパクトを読者にたたきつける。これまたリンチ的だ。

一言で感想をいうならばなんとも恐ろしい作品としかいえない。
でも文章は相変わらず繊細で美しく、面白いことには間違いないのだ。

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