2007年9月9日日曜日

「LONDON CALLING -ザ・ライフ・オブ・ジョー・ストラマー」鑑賞。


2006年 アイルランド・イギリス映画
ジュリアン・テンプル監督作品

パンクロックの代表格THE CLASH(以下クラッシュ)のボーカリストとして有名なジョー・ストラマーの生涯を追ったドキュメント映画である。ジョーは2002年の12月に心臓発作でこの世を去っている。

ジョーの簡単な生い立ちからクラッシュ結成、そしてバンドの崩壊、その後の隠居生活を経て新バンドであるメスカレロスの結成までを貴重な映像の数々とスピーディな展開、そして多数のゲストの証言で綴ったドキュメントである。

見所はやはりクラッシュの初期の映像であろう。
冒頭のスタジオで「白い暴動」の歌いれをするジョーの姿だけでももうヤバイ。観客の熱狂が凄まじいライブ映像も観るだけで興奮してしまう。1970年代後半のパンクシーンの熱狂がダイレクトに伝わってくる映像だ。「LODON'S BURNING」など彼らの代表曲のライブ映像が爆音で流れるだけでももう鳥肌モノだ。そしてタイトルにもなった「LONDON CALLING」の緊張感あふれるプロモ映像がバンドが成熟期を迎えたことをロンドンから世界へ表明するかのごとく映し出される。この場面が間違いなくこの作品のクライマックスと言ってよい。

この後は、メンバー間の確執や、商業ロックに飲み込まれて矛盾を感じジョーが深く苦しみだすなどして、ひたすらバンドが崩壊していく様が描かれる。セックス・ピストルズと並んでパンクの2台巨頭と呼ばれるクラッシュであるが、ピストルズが「破壊」のバンドであったのに対しクラッシュはレゲエやダブなど様々な音楽を取り込んで貪欲にアルバムを生み出していったいわば「創造」のバンドであっただけにこの崩壊は残念でならない。U2のボノが劇中「クラッシュの最悪なところは、あんなに最高なバンドを自らつぶしたことだ」と語るがまさにその通りだ。

クラッシュに多大な影響を受けたと話すゲストもまた豪華である。U2のボノや、プライマル・スクリームのボビー・ギレスピーなどのミュージシャンのみならずジョニー・デップやマーティン・スコセッシ監督までもが登場し「彼らに影響を受けた」と嬉しそうに語っているのには驚いた。いかにジョー・ストラマーの生き方が真摯で力強いものであったかを皆が力説していた。

バンドの崩壊から過去のしがらみを全て打ち切るべくジョーが隠居のような生活を続けて、その末にメスカレロスの結成にいたるまでの再生の道のりは、疲れきったロックスターがリハビリをしているようにしか見えず観ていてやや辛いものがあったが、それだけにメスカレロスのツアーで世界中のファンから暖かく迎えられて充実した表情でライブをするジョーの姿はやさしく感動的であった。

これといって意外な展開もなく、いい意味でも悪い意味でも「真面目なドキュメント映画」であるが、パンクロックに生涯をかけ、最期までロックな男であったジョー・ストラマーの魅力が伝わる作品であることは間違いない。

「人間は何でもできるんだ。みな決められたレールの上を走るのに夢中だが時には立ち止ってみるのも重要だ。」というラストのジョーの言葉が深く胸に響いたのであった。
(生涯599本目の作品)

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