2008年3月16日日曜日

「ノーカントリー」観賞。


2007年アメリカ映画
ジョエル・コーエン監督作品

コーエン監督最新作「ノーカントリー」を有楽町で観てきた。

殺し屋を演じたバビエル・バルデムがコワすぎた。
アカデミー助演男優賞もうなずける怪演だった。
夢に出てきそうなほどコワい。
銃を使わずに高圧ボンベのスタンガンで次々と殺人をしていくそのさまはホント怖かった。

「悪」が金をめぐって、連鎖的に殺人を犯していき、その1歩あとを「正義」が追うという単純な物語展開は「ファーゴ」と類似しているが、大きな違いはラストだ。後味の悪いラストは、「悪」とはもはや一般人の常識では全く理解できない領域であり、しかも日常生活に静かに潜んでいるという、あきらめにも近い結末であり、そこにはなんの解決策もないのだ。トミー・リー・ジョーンズ演じる保安官はオープニングからどこか、この世の悪に疲弊しており、この物語でバビエル・バルデム演じる殺し屋に立ち向かうも、2人は結局一戦も交えないまま物語は終わってしまう。正義と悪が衝突することさえないのだ。
「ファーゴ」でも無言で殺人を次々と犯していく殺人鬼が出てきたが、ラストではフランシス・マクドーナンド演じる婦人警官に逮捕される。がしかし、この「ノーカントリー」ではバビエル・バルデム演じる殺し屋は、突然の交通事故でひどい損傷をうけながらも結局は生き残り、何事もなかったかのように昼下がりの住宅地を歩いて去っていく。そこには何があっても「悪」はうまい具合に生き残るのだという暗示を感じ取ることができる。この2作の決定的な違いは10年という時代の違いなのだろうか。それとも2001.09.11年以降ということの違いなのか。
いずれにせよ、1996年に製作された「ファーゴ」と2007年の「ノーカントリー」では「悪」の強さが全く違う次元にきている事が分かった。

というわけでなんとも救いようのない映画だったが、コーエン監督の確かな演出力は200%健在であり、最初から最後まで画面から目が離せない緊張感と面白さだった。
そういう意味では予想通りに「面白く」そして予想以上に「暗い」作品だった。

しかし、くどいようだがバビエル・バルデムはほんとコワかったな~。
(生涯621本目の作品)

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