2011年8月21日日曜日

吉村昭「破獄」


面白い。

4度の脱獄に成功した脱獄王の話をメインに
戦中から戦後の日本の状況と、当時の全国の刑務所の様子が詳細に書かれている。

脱獄王は作品中では佐久間清次郎という名前だが
実際は白鳥由栄という人物だったらしい。

どんなに頑丈な独房でも佐久間は必ず脱獄してしまう。
超人的な体力もさることながらそれだけではなく、
看守の心理も巧みに操った上での脱獄であり、人間離れした頭脳なのだ。
脱獄と逮捕を繰り返し、最終的に彼は府中刑務所へおくられる。
ここで府中刑務所の所長鈴江が佐久間の脱獄を防ぐために、
それまでの刑務所とはかなり違った特別な対応を彼にするわけだがこのあたりのくだりは実に感動的だ。
ぜひ読んでみてほしい。
「北風とお日様」を思い出したな。

基本的には事実の羅列で文章は進むが、要所要所でそこにはさまれる人物の心理描写が見事で
ムダがなく、かつ読むものの心にもなげかけてくる内容になっており、
読んだあとはいい歴史の勉強になったと同時にここちよい感動も味わうことができる。

吉村昭、他にも読んでみようと思う。

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