2011年6月26日日曜日

「白いリボン」鑑賞。


ミヒャエル・ハネケ監督
2009年オーストリア=フランス=イタリア=ドイツ

すげー映画だった。

見始めたのは日曜の夜23時。
「眠くなって途中で挫折するかなー」と思ったが、
グイグイと映画の世界に入り込んでいって気づけばあっという間の144分。

2009年のカンヌ国際映画祭のグランプリ作品だというのも納得。

ミヒャエル・ハネケというと「ピアニスト」のみ観ているが
なんともいえずに強烈で後味の悪い映画だった。
人間の汚い部分をあえてさらけ出すんだよな。
愛情よりも歪んだ愛を好んで描くというか。

で、この「白いリボン」だが、舞台は1913年のドイツのとある村。
登場人物がかなり多い。
事実上この村でナンバー1の権力者である「男爵」を中心に人々の生活が動いてる村であり
村の医者、男爵の畑を耕す小作人、男爵の子供の世話役、家令、教会の神父とその子供たちなどが登場する。
物語は村の医者が馬にのって家に帰ったときに何者かが仕掛けた針金に馬がひっかかり落馬して大けがを負うという事件から始まる。
これを引き金に1つ、また1つと暴力的な事件が起こっていく。
物語が進んでいっても事件の解明は全くされず、
むしろすべての村人が日頃から抑圧され、歪んだ精神をもっていることが明らかになっていく。

とくに冒頭ケガを負ってしまう医者の精神はなかなか歪んでいて、
彼とその年老いた助産婦とのまさに腐れ縁的な愛人的関係、
そして彼が実娘に抱く性的欲求など、
このおっさん、かなりの汚れというか変人です。

あとは厳粛すぎる神父とその子供たちの描写もすごい。
子供たちは厳しい父親を常に恐れているのだが、その表情が演技とは思えないほどリアル。
神父と子供が同時に出てくるだけでもうすごい緊張感。

村人達の内面で抑圧されたドロドロな感情がじわじわと増していく作品なのだ。
モノクロのときに美しく、ときにドス黒い深みのある映像も素晴らしい。

そして全く何も解決されないラスト。
舞台は1913年とはいえ、この「もはやどうにもならない」という終わり方はまさに「911後」の現代の映画だと思う。


以上、見事な作品だった。
こういう暗くて、いや~なカンジの世界にどっぷりと入り込める作品こそ、
「素晴らしい映画」であると思うのだ。

(生涯725本目の作品)

1 件のコメント:

Satsuki さんのコメント...

謙ちゃん

この映画は、 同じ監督の全作品'隠された記憶' の姉妹作品といえます。 '隠された記憶' を見ると' 白いリボン'が(と言うか、 監督が何を言おうとしてたのか) 少し分かり始めるような気がしました。 是非見て感想をブログして下さい。

さつき